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湧水と天平の国分寺へ2

 

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 前回は東京都国分寺市にある、武蔵國分寺を書かせていただきました。今回はその武蔵國分寺の横を流れる湧水、お鷹の道と太古の昔に出来た、国分寺崖線です。

 天平時代に建立された武蔵國分寺跡などを見学し、いよいよお鷹の道へ。現在の武蔵國分寺前から庭園風に敷石が敷かれた細い道を進むと、透き通った水が流れる小川が現われます。左には立派な長屋門、右にお洒落なカフェがあります。そのカフェでちょっと休憩。

 この日は9月2日で、まだ残暑厳しい時季です。冷えたアイスコーヒーに「ホッ」と一息着けました。時間は14時近くでしたが、ランチの方も多く、「美味しそう!ここで食べれば良かったかな・・・」。と横目で見ていました。

 向かいにある大きな長屋門は、史料館になっており、このカフェで入場券を購入いたします。入館にあたっては国分寺市により、新型コロナウィルス感染予防対策として、住所と氏名、電話番号を記入いたします。

 

 

本多家の長屋門。史料館になっています。

 「それにしても立派な門だな」。いよいよ門の内へ。中は広いお庭になっており、奥には武蔵国分寺跡資料館があります。武蔵國分寺跡から出土した銅で造られて菩薩像や瓦などが展示されています。「こんな古い形の銅の仏像、関東にもあったんだ!」と、奈良の法隆寺などで見る、大陸から渡ってきた当初の頭が少し大きく、「スラッ」と体がスリムな形をした仏像に感動いたしました。

 史料館を出て、今度はお庭へ。湧水の源がここにあり、こんこんと清らかな水が湧き出ています。樹木の下の台地から静かに湧きでて細い流れを作っています。その先には池があり、透明な水をたたえています。

「早くこの水飲みたいな!」日本名水100選に選ばれたお鷹の道の湧水は、「きっと美味しいだろう」と思っていました。

 

 

史料館内の庭から湧き出る、

はけの源流となる湧水群

 

 

湧水を貯めた池。ここから流れた水が、

はけの流れとなります。

 長屋門の内部も復元されて公開されています。「こんなに広くて立派だな!」門と言ってもお部屋があり、実際に人が住んでいたようです。縁側の先にはお庭も造られており、この空間は江戸時代に戻ったようです。2階には養蚕の史料館となっており、近隣の養蚕農家からも繭を仕入れて糸を作っていたそうです。

 この長屋門は国分寺村の名主であった本多家の屋敷の入口に表門とご当主の隠居所を兼ねて江戸時代末期に建築されたそうです。

 幕末から明治時代にかけては、お医者さんとなった分家筋の方が教育や書画などを多方面に活動する拠点として利用し、大正時代からは養蚕を行っていたそうです。色々と使用されて、この地の歴史そのものなのですね。

 長屋門の前を流れる小川はホタルも住むほど綺麗な水が流れます。この流れに沿う様にお鷹の道があります。先を進むと川幅の広い流れに合流し、真姿池と豊かな水量の湧水池があります。

 真姿池には伝説があり、昔絶世の美女と言われた玉造小町が難病に罹り醜くなります。

國分寺のお薬師様に祈ったところ、池で身を清めるようにお告げがあり、そのようにすると病はたちどころに治り、もとの美しい姿に戻ったそうです。今ではその真姿池に悠々と鯉が泳いでいます。

 

 

水量が豊富な真姿池湧水群

 しかし「お鷹の道」だなんて面白い名前ですね・・・。江戸時代に尾張徳川家の御鷹場に指定されていたことから「お鷹の道」と名付けられたそうです。

 そう言えば、国分寺駅から坂を下った所に、武蔵國分寺とお鷹の道湧水群があります。地形を見てもお寺の裏や、遊水池の後ろは小高い崖になっています。「この辺の武蔵小金井にも湧き水があったな!」。

 武蔵小金井の学校に通っていた学生時代、よく駅から学校まで歩きました。駅からは坂になっていてその近くの寺社には澄んだ池があり、水が湧いていたのを思い出します。

楽しくなり調べると、お鷹の道の崖は「国分寺崖線」と呼ばれ、何万年もの昔に多摩川の流れが台地を削ってできた地形だそうです。お鷹の道から北側の台地に降った雨が、南側の低い所に湧き出し、この地形を「はけ」と言うそうです。

 

 

東京都の看板を元に、はけの地形の絵を描いてみました。

 

 

地に降った雨は富士山の火山灰の「ローム層」を通り、太古に多摩川が運んだと言う「砂利の層」に水が溜まると、その下の粘土層は水を通しにくいので国分寺崖線の下で湧水となります。

 立川市から始まる国分寺崖線は国分寺市、小金井市、調布市、世田谷区、そして大田区の田園調布あたりまで続き、その距離はなんと約30㌔もあります。

 途中には、蕎麦で有名な深大寺や、等々力渓谷など、水に関係する名所があります。「すごい!お鷹の道も深大寺も等々力も、全部繋がっていたんだ!」崖線に沿って水が流れて人は住み、社寺や名所が出来た事に納得いたします。武蔵國分寺とお鷹の道の北側の小高い崖や、調布市の深大寺のお堂の裏のこの崖こそが国分寺崖線の一部だったのですね。

 はけには民家の裏口に面し洗い場のようなものがあります。「きっと昔は、畑から採れ立ての野菜を洗っていたのかな?」そんな風景が目に浮かびますね。

「あれ?水を飲む所が無いな?」市によると、水道水と違い、飲み水として24時間体制の管理をしていないので安全と言えないとの事で、結局飲める場所はありませんでした。「今度はここから小金井まで行こうかな?」またいつか来たい場所です。